ドローンの社会実装が進まない。。。それには色んな理由が考えられるかと思いますが、その1つに、ドローンのリスクが、十分理解されていないのがあるかなと思います。ゼロリスクでは社会課題の解決が進まないという意見もあろうかと思うので、ならば前向きに、そのドローンにとのようなリスクがあるのかを関係者で理解して、このレベルまでだったらその社会は受け入れようではないか、なんて議論ができてもいいかなと思い、ドローンのリスクについて、徒然と書いていきたいと思います。(「山の中だったら下に人もいないしもう少し自由に飛ばしてもいいじゃないか」、といった議論が少しづつ増えていて、でも、ドローンのリスクは地上にいる人だけじゃないしなあ、と思ったのもこれを記述しようと思った1つの理由です。)
まずここで議論するドローンのリスクを、第三者への重大な負傷に限るとします(建築物等への損害は除きます)。
↑この場合、1つ目のポイントなのですが、第三者とは、ドローンのリスクを受け入れて、またドローンが以下に述べるような制御不能な状態になった時に、直ちに被害を最小限にできるよう自分を守ることができる人以外だったりします。そういう意味では、立入管理措置で看板をして、十分第三者を排除できているかも怪しいので、制度改善の余地は大いにあると思います。
↑2つ目のポイントですが、空中にも第三者がいることです。山の中、川の上って確かに下には人が少ないのですが、人命救助や物資輸送で活躍するヘリコプターは結構低く飛んでいます。
ドローンは落下した場合に重大な負傷となるのでしょうか。米国がドローンの制度(Part 107)を構築中に、そのような検証は行われ、人にぶつかれば、重大な負傷を起こすに十分なエネルギーを持っています。またヘリコプターや有人航空機に飛行継続を困難にさせる重大なダメージを与えうることもわかっています。(いずれも、米国ASSUREプログラム等で関連の論文を見つけることができます。)当然、落下したら必ず第三者に衝突するわけではありません。衝突する確率、衝突して重大な負傷となる確率、を落とし込んでいていく。今の制度ではどれくらいのリスクを見込んでいるのか、社会課題の解決のため、どれくらいの確率まで受け入れる覚悟をしていけばいいのか、それが、リスクベースの制度設計になっていくかと思います。
↑3つ目のポイントとして、ドローンのリスクはよく、1飛行時間あたりの致死率で検討されることがあります。かなり簡単に書いたものですが、以下の地上と空中のリスクの足し算となります。
地上リスク:ドローンが制御不能になる確率x地上の第三者に衝突する確率x衝突して重大な負傷となる確率
空中リスク:ドローンが制御不能になる確率x空中の有人機に遭遇する確率x衝突して重大な負傷となる確率
これまで、ドローンの信頼性が比較的低かったため、既存の制度では第三者に遭遇する確率を減らそうという努力がなされてきました(空中がどこまで十分議論されてきたかは置いておいて)。でもそもそも制御不能になる確率を抑えたら、もっと自由に飛ばせるようになるのではないでしょうか。
それでは、ドローンが制御不能な原因を考えましょう。以下のような条件が複合的に組み合わさって制御不能になっていきます。
1)システムの技術的な問題、
2)外部システムの機能低下、
3)ヒューマンエラー、
4)運航に不利な条件
↑4つ目のポイントとして、ヒューマンエラーを防ぐために自動化を進めようという議論があります。実際、おかしな入力があっても、機械側がそれを防ぐという設計が期待されます。しかしながら、人はかなり複雑な機能をこなしていること、それを自動化・自律化するには、十分なデータが入手可能な状態では今ないこと、自動化・自律化したシステムがちゃんと機能するという保証が必要なこと、そのシステムがちゃんとメンテナンスされているかはやはり人の監視にかかっていること、など研究がまだ必要な領域として専門的には捉えられています。でも、もちろん、人に任せるより、提案するシステムがどれくらい安全かを示すことによって許可が得られる制度体制は欲しいものです。
リスクベースの話なら、じゃあ制御不能になる確率や、不具合時の1)~4)の割合は現状は?と議論を展開したいところなのですが、積極的にデータが集まっていない中、エキスパートナレッジを集めるという形で、現実的な対応策がJARUS SORAというアプローチでまとめられています。これは今度書きますね(福島ロボットテストフィールドの安全運航ガイドラインはドローンジャーナルのコラムで見ることができます)。一方、最近、Level 3.5の話題が出てきて、自動化への期待が高いようなので、最後に、パイロットや補助者が担う機能をいかにまとめていきたいかと思います。
例えば地上リスクに関しては
A)パイロットや補助者は、航空機の位置や姿勢を検証することができる(制御不能かどうか判断できる)
B)パイロットや補助者は、人口のより少ない地域を特定する能力を持ち、できるだけその上空を飛行するようにドローンにコマンドを出すことができる (制御不能になっても、できるだけ衝突する確率を減らそうとする)
C)パイロットや補助者は、ドローンの故障を特定でき、ドローンの近くにいる人々に警告を発し、または通知して、そのエリアから退去させることができる(制御不能になっても、できるだけ衝突する確率を減らそうとする)
D)ドローンが墜落した場合、パイロットや補助者は、墜落する可能性のある飛行区域をはっきりと見通す(衝突した場合の被害を抑えようとする)
といった機能を果たしていると期待されています。(十分に果たせない場合もあるので、補助する機械システムが出てくることは望まれているかとおもいます。)
また空中リスクに関しては、人による「見張り義務」として
①空中衝突の相手を検知し
②行動に対する意思決定を行い
③機体にその旨を指示し
④機体がその行動を行ったことを確認し
⑤空中衝突のリスクが十分収まったかを評価する
ことにより、衝突のリスクを減らそしていると考えられています。(十分に果たせない場合もあるので、補助する機械システムが出てくることは望まれているかとおもいます。)
なお、パイロットや補助者の自動化に向けては、人が事故を起こした事象はデータに残るが、事故を回避した事象はデータに残らないために人の能力は十分理解されていない、としてNASA等でヒューマンファクター等の研究が進んでいます。
つづく!